窒素は、化学式 N で表される元素で、植物が成長するとき、タンパク質を構成するのに欠かすことはできません。植物は、窒素を栄養として吸収するときに、硝酸塩 (NO3−)やアンモニア(NH3)といった化合物の形で吸収します。
根から吸収された硝酸塩やアンモニアは植物の中で分解されて窒素となり、タンパク質の原料となります。 ふつう植物に含まれる硝酸塩の濃度は高くはありませんが、土の中の窒素が多すぎて硝酸塩が必要以上に植物に吸収されたり、吸収した硝酸塩がタンパク質の合成に使われなかったりすると、植物中に硝酸塩が多量に残ってしままいます。
特に、家畜の糞尿や、窒素肥料を多量に使用した家畜用の作物では、硝酸塩が多量に蓄積してしまいます。牛などの反芻(はんすう)動物が硝酸塩を多く含む植物を食べてしまうと、中毒になって、窒息して死んでしまいます。これを硝酸塩中毒といい、家畜が突然死んでしまうことから『ポックリ病』と言われて、現在でも起っています。(人間にとっては牛ほどの毒にはなりませんが、硝酸塩中毒の死亡例はあります。)
さきほど、植物は窒素を栄養として吸収するときに、硝酸塩 (NO3−)やアンモニア(NH3)といった化合物の形で吸収するといいましたが、硝酸塩やアンモニアは、動物のふん尿そのものや、ふん尿が微生物に分解されることによってできます。家畜のふん尿を積み上げて放置したり、地面に穴を掘って貯めておくと、その土地の土は栄養過剰(窒素過剰)になってしまいます。人の尿にはアンモニアが含まれていることは有名ですが、上記のように、アンモニアは窒素を含んでいるので、植物の栄養になります。昔は、人の糞尿を畑にまくことで、畑の土を肥やしていた地域がありますが、このことも一つの理由でしょう。家畜のふん尿を積み上げている場所に生えている牧草は、窒素過剰により育ちがとても良く、緑色が濃く普通の倍くらいの長さにも育っています。その牧草を食べた牛が硝酸塩中毒で死んでしまったということもあるようです。
また、硝酸塩が地下に染みこんで地下水が窒素過剰になってしまうことも現代の環境問題の一つとなっています。「何事も、少なすぎても、多すぎてもいけない」といいますが、これは窒素においても当てはまりますね。