賢い人は自分のことをそんなに賢くないと思うし、愚かな人は自分のことを賢いと思い込む
画像: Creative Commons 0

賢い人は自分のことをそんなに賢くないと思うし、愚かな人は自分のことを賢いと思い込む

2023/7/16

ダニングクルーガー効果

皆さんは、自分は周囲と比べてどのくらい能力があると感じていますか?どんな人も、自分が思っている能力と客観的に見た能力とにはギャップがあります。ギャップに関する現象で、ダニングクルーガー効果というものがあります。アメリカの社会心理学者のダニング氏とクルーガー氏が心理学科の学生に対して行なった実験では論理的思考、英語の文法、ユーモアのセンスについてのテストを受けてもらい、その後、心理学のクラスの中で自分がどのくらいのランクにいるのかを予想してもらいました。

結果は、テストの点数が低い人ほど、自分には論理的な能力があると判断する傾向がありました。一方で点数が高い人は、自分の能力を正しく、もしくは控えめに判断しました。つまり、有能な人は自分を過小評価し、有能でない人は自分を過大評価するということです。

画像: Creative Commons 0

このグラフはユーモアについての研究の結果です。英語の文法、論理的思考能力においても、同じようなグラフとなっています。縦軸(percentage)はテストの点数(予想の点数と実際の点数のどちらにも用います)です。横軸はテストの実際の点数によって、左から 4 つのグループに分けています。左端のグループ(Bottom Quartile)が一番テストの実際の点数が低く、右端のグループ(Top Quartile)が一番テストの実際の点数が高くなっています。濃い線(Perceived Avility)は、予想した得点。薄い線(Actual ability)は、実際の得点です。

グラフを見て分かるとおり、一番有能でない左端のグループは約 50 点も自分の点数を上乗せして予想していました。 せめてもの救いは、左端のグループでも、一番能力がある右端のグループより能力が上だと思っているわけではなかったことです。この実験の論文がイグノーベル賞を受賞したこともあり、ダニングクルーガー効果は有名になりました。

インポスター症候群

先ほど、点数が高い人は自分の能力を控えめに判断する傾向があるといいましたが、この現象に似たもので、インポスター症候群というものがあります。 インポスター(Impostor)とは、ペテン師、詐欺師という意味で、能力があることを示す客観的な証拠があるにもかかわらず、自分は詐欺師であり、成功に値しないという考えを持ってしまう症状です。女性(仕事において)や有色人種(アメリカやヨーロッパにおいて)などのマイノリティー的な立場の人に多いといわれています。インポスター症候群に陥ると、自分の実力を肯定できず、「今の自分は偽物だ」「偶然上手くいっただけ」「タイミングが良かっただけ」などと思い、自分は実際より能力があると他人を信じ込ませることで今の立場を手に入れただけだと考えてしまいます。

その結果、自分を追い込んでさらに頑張ってしまい、燃え尽きてしまうこともあります。 インポスター症候群は、多くの人(人口の約 70%)が成長していく過程で経験するものであり、これを克服することで次のステージに進めるという意見もあります。

能力はそんなにないのに自己評価が高すぎると、周りに煙たがられるかもしれませんし、能力はあるのに自己評価が低すぎると、精神的に参ってしまいます。どちらが高いかに関わらず、自己評価と実際の能力の差が大きすぎると、苦しい結果が待っているかもしれません。自分を俯瞰して見ることができたらいいのですが、なかなか難しいですね。

参考資料

前の記事
象牙の歴史とプラスチックの台頭: 環境、経済、文化の交差点
次の記事
鉄道が庶民に旅行を広めた
次に読んでみませんか?