2006 年の冬、アメリカ各地でセイヨウミツバチが一夜にして失踪するという事件が起きました。ハチの巣と巣の中の女王バチは残っているのですが、それ以外の働きバチが一斉に姿を消しました。周囲に死骸などの痕跡もありませんでした。この年のアメリカの事例以外にも、2006 年以前から現在まで、アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの世界各地で同じような現象が起っています。このミツバチが姿を消す現象は、蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder : CCD)と呼ばれています。
蜂群崩壊症候群は、メアリー・セレスト現象とも呼ばれます。この名前はメアリー・セレスト号という船が 1872 年にポルトガル沖で無人のまま漂流していたのを発見された事件から名付けられました。船だけを残して人が全員失踪しており、未解決事件となっています。「船だけを残して失踪」と、「ハチの巣だけを残して失踪」が似ていることから名付けられました。
CCD に似ている現象で、ミツバチが大量に死んでしまうという現象も世界各地(日本でも)で起っています。ミツバチの大量死、失踪の原因は特定はされていません。可能性としては、疫病・ウイルス・ダニなどによるもの、農薬・殺虫剤によるもの、スマホなどの機械が出す電磁波によるもの、害虫予防のための遺伝子組み換え作物によるもの、ストレスによるもの、などがあります。
特にアメリカでは作物に花が付く時期に合わせてミツバチに受粉作業をさせるために、ミツバチを巣箱ごとトラックに乗せて、アメリカの各地を移動させています。そして運ばれる先の多くは除草剤により他の植物が全くない状況で一つの作物が栽培されています。この移動や環境の変化によるストレスがハチの大量死、失踪の原因として挙げられています。
現在、アーモンド、桃、セイヨウナシ、サクランボ、木苺、ブラックベリークランベリー、大豆、リンゴ、サクランボ、イチゴ、キュウリ、メロン、スイカなどなど、多くの作物がミツバチの受粉に頼っています。ミツバチなどの昆虫によって花粉を運んでもらっている作物は、アメリカには 100 種近くあり、農作物の3分の1がミツバチの受粉に依存していることになります。アメリカやヨーロッパでは大量死、失踪によってミツバチの数は年々減っています。ミツバチの値段が高くなり、しかも農作物の生産量は減るので、農家の人々は経済的な打撃を受けています。(中南米、アジア、アフリカなどではミツバチは増えており、世界的にはミツバチの数は増加しています)今後どうなるのかは分かりませんが、このような現象が多くおこり、ハチが集団で失踪したり死んでしまったりし続けると、私たちの食生活にも影響が出てくるかもしれません。
ハチミツ産業については、こちらからどうぞ。