今回は、アメリカ独立戦争のときのお話しです。アメリカがイギリスの植民地だった頃、アメリカ国民には「印紙税」や「茶税」などの様々な税金や経済規制がかけられました。とうとう我慢できなくなったアメリカ人は独立を決意し、ついに 1775 年にイギリスと戦争をすることになります。これが独立戦争です。しかし当時、紙をイギリスやオランダなどからの輸入に頼り切っていたアメリカは、戦争をするに当たって困難にぶつかります。
困った政府は、紙の生産量を増やそうと、お達しや呼びかけを行ないました。 当時は、着古した衣服などのぼろ布から紙がつくられていたので、住民に、製紙に使える白いぼろ布を、いかに少ない量であっても溜めることを義務づけました。ノースカロライナの製紙場は、若い女性に向かって「布は、雪のように白い胸を隠すにはもはやふさわしくない」「古いハンカチを自分のところに売ってもらえれば、 いつの日かそれがラブレターとなって戻ってくるかもしれない」 というキャッチコピーで、製紙場にぼろ布を売ってくれるように、訴えました。
軍隊の方は、なんとか紙を入手しようとしました。本もバラバラにしたら紙として使えるということで、たくさんの本が破かれ、紙としてマスケット銃に使われました。 戦争の年に出版した「聖書」の三千部のほとんどがマスケット銃の発砲のために使われたそうです。また、未製本の『殉教者列伝』(キリシタンの殉教者達の記録書)が荷馬車二台で製本所へ向かう途中、大陸軍の部隊に捕らえられ、ブランディワインの戦いに用いられました(略奪じゃん!)。新聞社は「もっとたくさんの記事を載せたくてもそのための紙がありません!」と謝罪していたそうです。このような苦難を乗り越えて、アメリカはイギリスとの戦いに勝ち、独立を勝ち取ったのでした。