画像の花はイヌバラと呼ばれるバラです。私は、最初に表紙の写真の花を見たとき、「え?この花ってバラなの?」と思いました。よく見るバラって、
こんなのですよね。皆さんはどう思いましたか? 今回は、そんなイヌバラのお話です。
イヌバラ(カニナバラとも呼ばれます)は、淡いピンク色をした野バラで、英語では「rosacanina」 や「 dog rose」「wild rose」などと呼ばれます。
「 dog rose」は「イヌバラ」と同じように「犬のバラ」を意味しています。おそらく「イヌバラ」は「 dog rose」を直訳したものでしょう。「 dog rose」の名前の由来は 18-19 世紀に狂犬病の治療にイヌバラのローズヒップが用いられたから、というものと「栽培種のバラと比べて無価値」という意味の「犬」という 2 つの説があるそうです。ヨーロッパでは、イヌバラの花びらは狂犬病の治療に、そして葉は便秘薬、 種子は利尿薬として使われていました。イヌバラはアロマテラピーでも利用されています。心を落ちつかせる香りの作用により悲しみや、憂鬱に効果があるとされました。
イヌバラの果実はローズヒップと呼ばれます。ローズヒップって、「ローズヒップティー」などで聞いたことありますよね!(バラ科の果実を総称してローズヒップと呼ぶこともあります)
第二次世界大戦中、ドイツはイギリスへの物資の供給を妨害するために、潜水艦の U ボートでイギリス行きの物資を積んだ商船を標的にし、海上封鎖を行ないました。それによって食料などの多くの物資の輸入がストップしたイギリス国内では、柑橘類が不足して「ビタミン C 不足で多くの人が壊血病にかかってしまう」と恐れられていました。そこでイギリス政府は、国中に野生に生えているローズヒップを摘むように呼びかけました。結果、女学校などの学童やボランティアもローズヒップの収穫にかり出され、終戦までに 2000 トンのローズヒップが、ローズヒップシロップ工場に集められたそうです。