ロックンロールを広めた第一人者と言われるであるエルヴィス・プレスリーは20世紀半ばのアメリカで音楽シーンに登場し、何百万人もの心を捉えました。しかしその成功は、エルヴィスのマネージャーのパーカー大佐の巧みなマーケティング戦略があってこそともいえます。今回はパーカー大佐の戦略の一つである「バッジの販売」を紹介します。
パーカー大佐は、「I LIKE ELVIS」(エルヴィスが好き)バッジを販売しました。このバッジはファンの心を掴み、たくさん売れました。ファンたちはバッジを服に付けて歩くだけで、何も言わずともエルヴィスのファンであることが一目でわかるため、自己表現の手段ともなり、同じくエルヴィスのファンと繋がることができました。もちろん、エルヴィスとパーカー大佐はバッジの売り上げでさらに利益を得ることができ、人々がバッジを付けて歩くことにより、ファンたちは無意識のうちにエルヴィスの宣伝役となったのです。
そしてこれに加えて、パーカー大佐は「I HATE ELVIS」(エルヴィスが嫌い)というバッジも販売しました。この一見奇妙な戦略は、エルヴィスに対する否定的な感情さえも利益に転換するという画期的なものでした。エルヴィスや彼の音楽を好まない人々からも利益を得ることができるのです。
また、Redditの投稿によると、エルヴィスのアンチファンたちは「I HATE ELVIS」のバッジにある「H」を消し、「I Ate Elvis」という言葉遊びをして楽しんでいたようです。
「I Ate Elvis」は何らかの形でエルヴィスを超えたり、彼に勝ったりすることを意味していました。これは文字通り「食べた」側は「食べられる側よりも」上の立場であるというイメージから来ています。また、「I Ate Elvis」は、「I ate Elvis's lunch」(エルヴィスのランチを食べた)の省略表現と解釈することもでき、これも自分の優位性を表す表現でした。現代の解釈では、「I ate someone」という表現には性的な関係を示唆する意味がありますが、当時はそのような性的な意味合いは含まれていなかったので、この表現を楽しむことができたのそうです。当時の若者たちの間で「I Ate Elvis」は、エルヴィスに対する競争心を満たしてくれる表現だったようですね。
このように、バッジを通じてエルヴィスに対する愛と憎しみの両方から利益を得るパーカー大佐の戦略は、彼が本当に狙ってやったことなのかはわかりませんが、結果として「I HATE ELVIS」バッジも売れ行きが良かったようです。ファンだけでなくアンチファンの感情もビジネスの機会に変えるという、コロネル・パーカーの巧妙なマーケティング戦略はとても賢いですね。このようなパーカーの戦略は、エルヴィスを比類なき名声へと押し上げるだけでなく、音楽業界での将来のマーケティングの基盤を築いたと言われています。
https://www.worthpoint.com/worthopedia/i-hate-elvis-1956-presley-badge-button-pinback https://redriverparishjournal.com/2020/02/05/i-hate-elvis/ https://www.gottahaverockandroll.com/i-like-elvis-pinback-button-lot1105.aspx https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Elvis_Presley-_Billboard_ad_1956.png https://i0.wp.com/redriverparishjournal.com/wp-content/uploads/2020/02/Feb5-Remember-This-BOT.jpg?w=750&ssl=1