なぜ産業革命はイギリスで最初に起ったのでしょうか?
決定的な一つの理由はありませんし、歴史家の中でも明らかになっていません。今回は、主な理由といわれているものを紹介します。
イギリスのブリテン島には、他の国よりも多くの石炭がありました。至る所に石炭が見つかり、どんどん採掘されていました。ご存じの通り、石炭は、産業革命と切り離すことはできません。石炭が、蒸気機関のエネルギーを生み出し、様々な機械を動かします。
産業革命以前では、木を燃やしてエネルギーを得ていました。しかし、山が少ないイギリスでは森林が枯渇して深刻なエネルギー不足におちいりました。これによって燃料が石炭に移る時期が早かったといわれています。当時のイギリスでは、同じエネルギーを生み出すのに、木材は石炭の2倍の値段がかかったそうです。
18 世紀、イギリスはフランスなどとの植民地戦争に次々と勝利し、植民地を広げていきました。また、本国とアフリカ、アメリカ大陸の三角貿易によっても、かなりの利益をあげました。
こういった植民地との貿易による多大な利益が、産業革命を起こした資金の一つとなりました。
イギリスでは植民地との交易を通じて都市と製造業が成長しました。都市の労働者が足りなくなったことにより、賃金と生活水準は世界で最も高かったそうです。また、識字、計算、経済的な知識を持った人が増えたことも、賃金が高くなった理由の一つです。賃金が高いと人を雇いづらくなります。人が行なっていた仕事を機械にやらせれば、人件費が削減できるので、積極的に機械化を導入する企業が多かったといえます。
イギリスでは、他の国よりも早く特許制度が制定されました。これにより特許を獲得して一家宇千金を狙う発明家が、最新技術を発展させていきました。蒸気機関の発明に関わったジェームズ・ワットは、特許で多額の利益を得たと言われています。
このように、産業革命がイギリスでおこった理由としては様々なものが挙げられます。これらの理由をまとめてみると、イギリスでは、当時の最新技術が発展しやすく、技術開発によって利益が生まれる形になっていた。ということだと思います。
66 - 『朝日百科 世界の歴史 10 ー 19 世紀ー』1991 年 朝日新聞社 E656 - 3.産業革命はエネルギー革命であった【第 4 章「農」と国土の変貌】