私たちは、真水と呼ばれるきれいな水を当たり前に飲んでいて、安全な水を飲めるという権利があるのは当然のことだと感じられます。ですが一般家庭が良質な水を飲めるようになったのはごく最近のことで、浄水設備が整っていない時代には、水は危険な飲み物でした。
ほんの 200 年くらい前は、水より、アルコール飲料の方が安全でした。(アルコール飲料とは、主に、ビール、ワイン、蒸留酒、りんご酒などです。)当時は浄水設備がないので、水を飲みたかったら、汚染されている川、湖の水や湧き水を直接飲むしかありません。それによって食中毒や病気が多発しました。
それに対してアルコール飲料は、① 熱や微生物による加工処理がされていることによって元々雑菌が少ないこと、② アルコールには殺菌作用があり、保存に適していることから、水よりかなり安全な飲み物でした。子供達もごく普通にアルコール飲料を飲んでいました。
海賊がよく酒を飲むのも、腐りにくいアルコール飲料を船に積んでいたからだそうです。長い航海中に、水は腐ってしまいます。
コレラは、コレラ菌に汚染された食べ物や飲み物を摂取することで感染する病気です。1800 年代、コレラは浄水設備が不完全な都市で流行しました。感染者の排泄物にはコレラ菌が含まれています。その排泄物が流れている下水管から汚水が漏れ、飲み水に混入し、その水を都市に住む多くの人が飲んでしまい、感染が広がりました。
よく知られていることですが、今の水道水にはコレラなどの病原菌が水道管の中で繁殖しないようにするために塩素が入っています。
驚くべきことに、約 2000 年前に栄えたローマには複雑な水の管理システムがありました。9本の水道橋で水が運ばれ、貯水池や公共の噴水、公共浴場もつくられて効率的に貯水と給水を行ないました。しかし異民族の侵入などによってローマは衰退していき、水道橋などの給水システムを備えた建造物も破壊されていきました。
そしてついに、ローマの人々は汚染された井戸水や下水も流れ込む川の水をひくようになり、文明は失われました。