飢饉は、リーダーの人徳が無いから起こる!
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飢饉は、リーダーの人徳が無いから起こる!

2023/4/16

日本の歴史においては、その時代ならではの価値観がありました。今回は奈良、平安時代の特有の価値観を紹介します。 それは、飢饉や災害が起るのは、天皇の人徳がないからだというものです。干ばつによって飢饉が起ると、まずは、社寺で雨乞い(あまごい)を行なって、天に、雨を降らせてくれるように祈ります。しかし、それでも干ばつが収まらないと、天皇は大赦を行ないました。大赦とは、刑務所に入っている人を釈放することです。

722 年(養老六)の詔には、「除陽が乱れて、災害や干ばつがしきり にある。名山に階用をささげ、天神地祇を祭ったが恵みの雨は降らない、 これは朕の徳が薄いためにおこったことであろうか。天下に恩赦を行うこととする」として、獄につながれている者をすべて釈放するよう命じている。

-- 気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防 ー p41

天皇が罪人の罪を許して解放する=天皇に人徳がある=干ばつが収まるという理屈です。こういった考え方は、中国から伝わってきたものです。古代中国では国を統治する者に徳がないと天災が起きると考えられており、これが、王朝を交代する主な理由となっていました。日本では王朝の交代までははなかったものの、このような中国の徳治政治の影響が強く、天災が起きるたびに、天皇は自分が不徳だからではないかと悩んでいたそうです。

もちろん、直接的な飢饉への対応も行なっています。主な対応は 3 つありました。1 つめは、租庸調(税として納める米や布、特産品など)の軽減。2 つめは、米だけでなく、干ばつに強い「雑穀」も積極的に栽培するように農民達に伝える。3 つめは、人々へ米を給付する。です。「へー、昔ってこんな考え方をしていたんだ」と思う一方で、現代の私たちも、似たような考えを持っているのではないかな、とも思います。 首相や大統領が世の中を全て変えることは出来ないのに、あの首相やあの大統領を交代させれば世の中が良くなるんじゃないか?と思うことは誰にでもありますよね?

参考資料

  • 気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防 1400 年 ---田家 康 ---2013
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