近年、自然由来の食品への関心が高まり、ハチミツへの需要も増しています。商品に「ハチミツ」の文字が書かれていると、商品の価値が上がります。しかし、実際のハチミツの生産量は減少しています。論理的に考えるとハチミツ以外の成分が混入されて、純粋なハチミツとして売られていることが考えられます。
「ハニーロンダリング」事件はその典型的な例です。Alfred L. Wolff 社はドイツの企業で、国際的な輸入、輸出を行ってきた貿易会社でした。同社は人体に有害な抗生物質が混入したハチミツを輸入し、アメリカのメーカーに販売していました。関係者の一部は逮捕されましたが、この事件が公となったことで、消費者のハチミツへの信頼は揺らぎ、無関係のハチミツメーカーにも影響が及んだのです。
さらに、中国からの安価なハチミツ輸入により、アメリカの養蜂家は厳しい状況に直面しています。アメリカは中国産のハチミツへの輸入に関税(anti-dumping)を課しいますが、中国はこれを回避するためにハチミツをインドネシアやタイなどに輸出し、それを再輸出してインドネシア産、タイ産などと表示してアメリカに輸出しています。
番組内で紹介されたドイツの検査機関では、ハチミツの原産国、安全性を証明しています。ハチミツメーカーはこの機関を利用して原産国を証明してもらうことができます。検査には、化学物質の検出やハチミツに含まれる花粉の分析による原産国の特定が行われます。日々新たな検査法が開発されていますが、すぐにその検査を通過する方法が見つけられるため、状況はいたちごっことなっています。
また近年、植物性ミルクの需要の増加に伴い、アーモンドが大量に生産されています。アーモンドの受粉はミツバチが行う方が効率的であるため、ミツバチの貸し出しが行われています。ハチミツの価格低下に直面している養蜂家は、ハチミツの生産だけでは収入を得るのが難しく、ハチの貸し出しビジネスを行っているのです。毎年一月、アメリカ各地のの養蜂家たちはカリフォルニアのアーモンドの農場に、ミツバチの巣箱を運びます。この時期には、アメリカ各地のミツバチが一斉にカリフォルニアに集まるため、各地のミツバチが混ざりあったり、病気が蔓延したりする恐れがあります。更に、農園では防カビ剤が散布されることもあり、ミツバチの健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。アーモンドの広大な畑に、ミツバチの巣を置いておくことで、ミツバチに受粉してもらうのですが、その際に置いてあるハチの巣箱が盗まれるという事件も発生しています。養蜂家にとって、ミツバチは資産なので、盗難は大きな損失となります。