今、二酸化炭素の排出が問題になっていますが、ニュースでよく取り上げられる影響は二酸化炭素の温室効果による地球の温暖化です。 しかし二酸化炭素は、海にも影響を及ぼしています。それは海の酸性化です。これまで人類が、石炭や石油を燃やして排出してきた二酸化炭素の約1/3は、海に吸収されています。そうして二酸化炭素を取り込んで、海はどんどん酸性化していっています。
酸性化といっても、レモン汁のように酸っぱくなったり、何かを溶かすくらいの酸性になっているわけではありません。200年前の海のpHの平均は8.2だったのが、現在は8.1になっています。(pHは7当たりが真水です。)pH8.1はまだ弱アルカリ性ですが、このまま何も対策が取られずに行くと2100年にはpHが7.8くらいになる可能性があります。※
※この考え方には注意が必要です。19 世紀のロンドンでは多くの馬車が街を行き交い、馬糞の処理問題が深刻でした。1894 年、タイムズの記者は、1940 年代までには、ロンドン市内に積み上がる馬糞の量は 2.7 メートルになると予想しました。しかし 10 年後には車が発明されたことにより、彼の予想は外れたという話があります。 pHが0.1変わるのはちょっとした変化に見えますが、海がわずかにでも酸性化すると海の生物には様々な影響が出てきます。
例えば、野生の若いクマノミは、二酸化炭素を吹き込んだ水の中だと匂いが分からなくなり、音も聞こえなくなってしまうという研究結果があります。 貝などが持つ貝殻の主成分は炭酸カルシウムです。炭酸カルシウムは酸にとても溶けやすいので、水が酸性化すると殻が脆くなったり、変形したりすることがあります。しかし逆に、酸性化した水の中では元気になって殻も丈夫になるというコウイカの仲間もいます。
卵の殻も炭酸カルシウムでできています。これは極端な例ですが、卵をお酢に漬けて置いておくと、卵の殻が溶けて薄い膜に囲まれたプニプニの卵になります。 環境問題としては、森林の減少や気温の上昇、海面の上昇などが良く取り上げられますが、海の酸性化問題については、ほとんど取り上げられません。
309 - Pexels Francesco Ungaro