今回紹介する絵画は『The Calling of Saint Anthony(聖アントニウスの招き)』です。アルトゲン・クレス・ヴァン・レイデンの 1530 年の作品です。彼が 32 歳ごろに描きました。左奥にいる司祭は「自分の所有物をすべてを誰かに渡しなさい」と人々に説教をしています。右中央に大きく描かれた濃いエメラルド色、オレンジ色の人物が聖アントニウスです。彼は裕福だそうです。
そして、右上に目を向けてみると、そこにも聖アントニウスがいます。彼は司祭の呼びかけに応えて、貧しい人々にパンを配っています。聖アントニウスは、敬虔な両親にキリスト教徒としての教育を受けましたが、20 歳になった頃両親と死別してしまいます。その後財産を貧しい者に与え、自らは砂漠に籠もり苦行をおこなったそうです。聖アントニウスはしばしば悪魔の誘惑にさらされて、その信仰心を試されまたといいます。
気になるのは、前面にいる女性の白いフードに止まっているハエです。これは作者のジョークだそうです。ハエって死骸にたかったりするので、「死」を連想させます。なので、これは司祭を皮肉ったブラックジョークなのでは?と思います。(個人の感想です。)この絵はかなりの奥行きが表現されていますし、右上の 2 人目の聖アントニウスなど、縦長のキャンバスを余すところなく使っています。